南極へ行こう!南極地域観測隊員募集:設営部門・観測部門(越冬隊)
概要
南極地域は、その地理的特性に伴う環境モニタリングの重要性の観点から、科学研究や観測を欠かすことができない特別な地域です。我が国は、1955年11月の閣議決定に基づいて、南極地域観測統合推進本部(事務局:文部科学省、以下「南極本部」という)の下で、国際地球観測年(第3回国際極年)を契機に1956年度から国家事業として南極地域に観測隊を派遣して観測活動を継続的に実施してきました。その観測史上においては、オゾンホールや大量の隕石の発見、オーロラ発生機構や大陸氷床コアによる過去72万年の気候変動の解明など、多くの科学的な成果をあげてきており、2022年度(第64次)からは、南極地域観測第Ⅹ期6か年計画に基づいた観測計画の実施に取り組んでいます。
南極地域観測事業の実施中核機関である大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所(以下、「国立極地研究所」という)では、従来、主に関係機関や大学・研究機関などからの推薦に基づいて隊員候補者の選考を実施してきましたが、2004年度からは、一部の分野において、広く有為な人材を集めるため、公募を実施しています。
この度、国立極地研究所が担当する設営部門のうち以下に示す特定の分野について、広く観測隊員候補者(国立極地研究所の期限付き職員として雇用)を公募することといたしました。
設営部門(調理、医療、野外観測支援、環境保全)越冬隊 応募要件
担当 | 募集 人数 | 職務内容 | 条件 | 公募 整理番号 |
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調理 | 2 | 出発前(国内) 越冬隊の1年分の食材、調理用品、消耗品等の調達を計画的に行い、「しらせ」への物資搭載に備えて全て梱包を行う。 出発後(「しらせ」乗船中) 野外調査チームへの糧食の配布、献立の確認、切り分け作業などの対応を行う。 出発後(昭和基地到着後) 越冬隊30名程度の毎日の調理、調達した食材と予備食をあわせ、年間を通した食材の管理、厨房機器の保守管理、国内向けに定期的な業務報告を書面で行う。 また、越冬中の各種行事等への対応、当直者への調理関連業務の指示や夜勤隊員への夜食提供、次隊内陸旅行用のレーション等の準備、各種野外調査における行動食の準備等、基地生活において幅広く対応する。 次隊への準備として、食材の使用状況や必要な調理機器の情報をとりまとめて国内に報告する。次隊が昭和基地に到着した後は、実務を交えつつ業務の引き継ぎを越冬終了までに確実に実施する。越冬の終了時には全ての食材を消費、厨房機器など業務に関わる物品を整理・清掃の上で次隊に引き継ぐ。帰国時に一年間の業務を報告書にして提出する。 | ・調理師免許を取得していること。加えて免許取得後に食材仕入れを含めた十分な実務経験を有し、現に調理業務にフルタイムで従事していること。 ・南極では、越冬明けの次隊到着までは補給がないので、自身と一緒に持ち込んだ食糧しか使用できない。このため、持ち込み時の食材の構成として、生鮮品は限られ、冷凍・冷蔵の食品が中心となる。この限られた条件を理解できること。 ・1年間を通したメニューの立案、越冬隊員30名程度(夏期間は短期間ではあるが最大60人程度)への食事の提供が可能であること。 ・大量の食材・物品調達を予算の範囲内で計画的に実施できること(参考:予算は一人分約80万円×人数分、調達する食材の物資量は梱包容器抜きで平均35tほど)。 ・持ち込んだ食材について、年間を通して適切な管理、計画的な使用(特に使い切り)ができること。 ・厨房機器の取り扱いに習熟し、その保守・管理を確実に実施できること。 ・越冬終盤に次隊内陸調査旅行に同行する可能性がある。その時は、昭和基地を離れて旅行隊の調理担当となることを了解できること。 ・これらの業務を確実に行うべく、PCによる事務作業が問題なくできること。具体的にはワープロソフト、表計算ソフト、メールソフトを使って事務作業並びに国内との連絡・調整・報告が円滑にできること。 | S-1 |
医療 | 2 | 出発前(国内) 医薬品や医療機器、衛生材料等の調達を計画的に行い、「しらせ」への物資搭載に備えて全て梱包を行う。また、隊員向けの健康指導及び医療マニュアルの編集等を行う。 出発後 帰国までの間、主に隊員を対象として医療業務及び健康診断等を行った上で健康管理・指導等を行う。また、医薬品及び医療器具、衛生材料等の管理を行うとともに、衛生管理面では水質検査等を行う。これらについては国内向けに定期的な業務報告を書面で行う。 次隊への準備として、必要な医療機器・医薬品等の情報をとりまとめて国内に報告する。次隊が昭和基地に到着した後は、実務を交えつつ業務の引き継ぎを越冬終了までに確実に実施する。帰国時に一年間の業務を報告書にして提出する。 上記の医療業務に支障がない範囲で、医療調査の業務を依頼する場合がある。 また、医療調査の課題に関して、委託を依頼する場合がある。 | ・医師免許ならびに臨床経験を有し、現に医療業務にフルタイムで従事していること。 ・医療機器や必要な医薬品の物品調達について、予算の範囲内で計画的に実施できること。 ・専門外の医療行為に関しても広く対応できることが望ましい(外傷の初期対応などを含む)。 ・専門領域を勘案し、出発前に他領域の訓練を行う可能性あり。 ・越冬期間の前後において、内陸調査旅行に同行する可能性あり。また、越冬中に傷病者が発生した場合、緊急搬出に付き添う可能性(早期帰国等)もあり。 ・医療調査を担当する可能性があり、対応できること。 ・医薬品等の管理や物品の調達、各種報告について、PCを用いた事務作業が円滑にできること。具体的には、ワープロソフト、表計算ソフト、メールソフト、プレゼンソフトを使って事務作業並びに連絡・調整・報告ができること。 | S-2 |
野外観測 支援 | 1 | 観測隊員が観測・設営作業など、計画実施に集中できるよう、総合的なサポートを行う役割。 出発前(国内)は業務に必要な機器・装備等の調達を計画的に行い、「しらせ」への物資搭載に備えて全て梱包を行う(取り扱う装備:全隊員に対する個人装備、野外観測パーティーや越冬隊全体の共同装備)。 また、野外観測に出かけるパーティーをはじめとして、隊員への安全面の講習や技術的な訓練を活動別、目的別等、隊の要請に併せて行う。 南極・昭和基地では、基地内及び周辺の沿岸・内陸フィールドにおいて、観測・設営計画遂行に必要とされる野外活動の現場支援を行う(ルートガイドや生活支援)。また、それにかかわる安全および計画の管理、それに関わる各種の講習や装備品の管理等を行う。 これらについては国内向けに定期的な業務報告(計画と実績)を書面で行う。 次隊への準備として、必要な装備品等の情報、基地周辺の海氷状況等を詳細にとりまとめて国内に報告する。次隊が昭和基地に到着した後は、実務を交えつつ業務の引き継ぎを越冬終了までに確実に実施する。帰国時に一年間の業務を報告書にして提出する。 | ・本格的な登山経験(国内のバリエーションルート、厳冬期の活動、海外の氷河を含む高峰登山等)並びに救助に関わる技術・知識を十分に有し、現に登山ガイド等の業務にフルタイムで従事していること。 ※氷河登山経験を有することが望ましい。 ・登山ガイドに求められる統率能力、安全管理能力を有する一方、観測隊の野外行動は、観測・設営計画に則った行動であることを理解し、フォロワー能力に長けていること。 ・昭和基地及びその周辺の海氷上、氷河氷床上での行動において、自らルートを設定し、同行隊員の安全を確保しつつ観測・設営作業に従事できる経験・技術を有すること。 ・一般登山者等が対象の登山技術・知識に関する講習会の主催及び実施経験を有すること。 ・国内および昭和基地において、野外活動の安全管理・レスキュー体制の構築並びにカリキュラムを設定した上で隊員への安全教育・講習を行えること。 ・ハンディタイプのGPS機器の操作に習熟し、得られたウェイポイント等のデータをPCの地図ソフト等で処理できること。 ・登山用品、クライミング用品、キャンプ用品に関連して、特定のメーカーに偏りのない、正確で幅広い知識を有すること。 ・越冬期間の前後において、内陸調査旅行に同行する可能性あり。 ・装備品の管理や物品の調達、各種報告 ・データ整理について、PCを用いた事務作業ができること。具体的には、ワープロソフト、表計算ソフト、メールソフト、プレゼンソフト、地図ソフトを使って事務作業並びに連絡・調整・報告ができること。 ・公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドⅢ以上の資格または同等の能力を有することを目安とする。 | S-3 |
環境保全 | 1 | 出発前(国内)は業務に必要な機器・備品等の調達を計画的に行い、「しらせ」への物資搭載に備えて全て梱包を行う。また、例えば汚水処理装置など、取り扱いに習熟が必要な機器について訓練を行う。廃棄物の分別や収納容器の取り扱いについて、隊員に講習を行う。 昭和基地では、各観測、設営作業で発生する廃棄物、生活廃棄物及び過去の残置廃棄物の収集・分別・持ち帰りのための梱包・保管を行うとともに、汚水処理装置の運用・管理及び装置のメンテナンスを行う(越冬中の生活規模30人。夏期間の生活規模は最大120人ほどが目安)。 また、廃棄物埋立地の管理並びに埋め立て廃棄物の処理を行う。 これらについては国内向けに定期的な業務報告を書面で行う。 次隊への準備として、必要な物品の情報、持ち帰り廃棄物の諸情報を詳細にとりまとめて国内に報告する。次隊が昭和基地に到着した後は、実務を交えつつ業務の引き継ぎを越冬終了までに確実に実施する。帰国時に一年間の業務を報告書にして提出する。 | ・廃棄物処理、浄化槽設備、汚水処理設備、焼却炉運用等のいずれかについて専門的な実務経験を有すること。または、宿泊設備を有する山小屋など僻地施設の総合的な管理・運営経験を有し、現在も実務についているか、下水処理施設の維持管理業務に携わっていること。 ・クレーン付きトラック、フォークリフト、パワーショベル等建設機械の資格を有し、操作に習熟していることが望ましい。 ・昭和基地における廃棄物の分別(約30種類)や収納容器の組み立て・取り扱いについて、プレゼンソフトを用いて隊員向けの講習を計画的に実施できること。 ・出発前の調達業務や越冬中の業務報告書作成等について、PCを用いた事務処理が滞りなくできること。具体的には、ワープロソフト、表計算ソフト、メールソフト、プレゼンソフトを使って事務作業並びに連絡・調整・報告が円滑にできること。 | S-4 |
観測部門 越冬隊 応募要件
モニタリング観測担当の職務内容・共通条件
担当 | 担当人数 (募集人数) | 職務内容 | 共通条件 |
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モニタリング観測 | 最大2名 | 昭和基地及び周辺地域でのモニタリング観測を継続して行なうため、観測機器の運用・保守を行う。 | 1)観測内容※1を理解し、責任と意欲を持って観測業務を遂行できること(守秘項目等含む)。 2)WindowsやUnix系OSのPCや周辺機器を使った作業経験 <以下項目のいずれかの経験を有していること> 3)資料1-1にある観測に関連する機器の取扱い経験。 4)コンピュータに関して、GUIだけでなく、コマンドラインでの作業経験。 5)理化学・工学実験・観測の実務経験、基礎的な電気回路の取り扱い経験。 |
モニタリング観測の分野および分野別に必要な条件
観測分野 | 観測項目 | 観測分野への適正 |
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宙空圏変動のモニタリング | 電磁環境の地上モニタリング観測 | 光学・電磁場観測などの経験を有することが望ましい。 |
宇宙天気・宇宙気候現象のモニタリング観測 | ||
中層・超高層大気モニタリング観測 | ||
気水圏変動のモニタリング | 大気微量気体観測 | 化学分析の経験を有することが望ましい。 |
南極氷床の質量収支モニタリング | ||
地圏変動のモニタリング | 統合測地モニタリング観測 | 測地・重力観測や地震観測の経験を有することが望ましい。 |
地震モニタリング観測 | ||
インフラサウンド観測 |
南極観測隊の概要
南極観測隊は、南極大陸での科学的調査を目的として派遣される研究者・技術者のチームです。南極は地球上で最も厳しい環境を持つ地域ですが、地球環境や宇宙、気象、動植物などの様々な分野において貴重な研究が行われています。南極観測隊は、この厳しい環境の中で気象観測、氷床の研究、生物調査、宇宙研究など多岐にわたる調査を実施し、地球や宇宙に関する知見を深める役割を担っています。
南極観測隊の歴史
1 南極探検の始まり
南極探検は19世紀初頭から始まりました。特に、ノルウェーの探検家ロアール・アムンセンが1911年に南極点に到達したことで、南極探検の重要性が認識されました。その後も各国が南極への探検隊を派遣し、南極大陸の地理や気象、動植物に関する基礎的な知識が少しずつ蓄積されていきました。
2 国際南極観測年(1957年-1958年)
1957年から1958年にかけて実施された**国際南極観測年(IGY: International Geophysical Year)**は、南極大陸に対する科学的関心を大いに高め、各国が協力して南極での調査活動を行う契機となりました。この期間中に、多くの国が南極に基地を設置し、科学的観測を本格的に開始しました。
3 日本の南極観測隊
日本は1956年に第1次南極観測隊を派遣し、翌年には南極に「昭和基地」を設立しました。これ以降、日本の南極観測隊は毎年派遣され、昭和基地を拠点として継続的な観測活動を行っています。日本の観測隊は、気象や氷床の研究、生物調査、環境保護の分野で数々の成果を上げてきました。
南極観測隊の役割と研究活動
南極観測隊は、南極の過酷な環境の中でさまざまな分野の研究活動を行っています。以下に、主な研究分野と役割を紹介します。
1 気象・気候変動の観測
南極は地球全体の気候に大きな影響を与える地域であり、南極での気象データは地球温暖化の研究において重要です。観測隊は、南極での気象観測を通じて、気温、風速、降雪量、オゾン層の変動などのデータを収集し、気候変動のメカニズム解明に貢献しています。
2 氷床・氷河の研究
南極大陸は地球上の淡水の約70%を氷の形で保持しています。南極観測隊は、氷床や氷河の動き、融解の影響を観測することで、海面上昇や気候変動に与える影響を研究しています。また、氷床の内部に含まれる気泡を分析することで、過去数十万年にわたる気候の変遷を調べることも可能です。
3 生物多様性の研究
南極には厳しい環境にもかかわらず、ペンギン、アザラシ、海鳥、南極の海に生息する微生物など、独自の生態系が存在します。観測隊は、南極の動植物の生態を調査し、生物多様性の維持や気候変動の影響を研究しています。
4 宇宙・天文学の研究
南極の澄んだ空気と光害の少ない環境は、宇宙観測に最適です。観測隊は、宇宙から降り注ぐ放射線や宇宙背景放射の観測、天文学的なデータの収集も行っています。南極の基地は、地球上で最も理想的な天文観測地点の一つとされ、宇宙の起源に関する研究にも利用されています。
南極観測隊の拠点と装備
1 観測基地
南極観測隊は、各国が設置した観測基地を拠点に活動しています。代表的な基地には、日本の昭和基地、アメリカのマクマード基地、ロシアのボストーク基地などがあります。これらの基地は、観測活動の拠点であり、隊員たちは数ヶ月にわたって厳しい寒さの中で生活しながら調査を行います。
2 観測船と飛行機
南極大陸への物資の輸送や隊員の移動には、観測船や飛行機が使用されます。日本の観測隊は、**砕氷船「しらせ」**を使用して南極に向かい、昭和基地への物資補給や隊員の輸送を行います。しらせは、南極海の厚い氷を砕きながら進むことができる特殊な船です。
3 装備と技術
南極での観測には、極寒の環境に耐えられる特殊な装備や技術が必要です。観測隊員は、特別な防寒服やテント、移動用のスノーモービルやトラックなど、厳しい気候条件に対応するための装備を整えて活動します。
南極条約と環境保護
南極は、科学研究以外の目的では利用されないようにするため、南極条約(Antarctic Treaty)が1959年に締結されました。この条約により、南極大陸は軍事的利用が禁止され、核実験や廃棄物の投棄なども厳しく制限されています。科学研究は自由に行われますが、環境保護の観点から、南極の自然環境や生態系に対する影響が最小限に抑えられるように配慮されています。
南極観測隊の意義
南極観測隊の活動は、地球環境や気候変動の研究において非常に重要な役割を果たしています。南極での観測データは、地球の過去の気候変動を理解する手がかりとなるだけでなく、将来の気候予測や環境保護に貢献しています。また、南極の生態系や宇宙観測を通じて、地球や宇宙に関する新たな知見を得ることができます。
南極観測隊の活動は、各国の協力のもとで行われており、地球規模の問題に対して国際社会が連携して取り組む良い例となっています。
締切
2024/10/18 17:00
ベネフィット
南極観測隊として、給与・手当を貰って南極に行ける