実は冬がメイン!ヒートアイランド現象って?【世界各地で影響】
ヒートアイランド現象って?
皆さん、ヒートアイランド現象って知っていますか?そして、主に冬に起こる現象だって知ってましたか?
「ヒートアイランド現象」。直訳すると「熱島現象」…よくわかりませんよね。夏の暑い日には、ニュースで良く聞く単語なので、言葉を知っている人は多いとおもいますが、具体的にどんな現象なのか、そしてその原因などを知らない人も多いと思います。
今回は、そんな「ヒートアイランド現象」についてわかりやすく説明していこうと思います。
ヒートアイランド現象とは
気象庁によると、ヒートアイランド現象の定義は以下のようになっています。
“ヒートアイランド(heat island=熱の島)現象とは、都市の気温が周囲よりも高くなる現象のことです。気温の分布図を描くと、高温域が都市を中心に島のような形状に分布することから、このように呼ばれるようになりました。ヒートアイランド現象は「都市がなかったと仮定した場合に観測されるであろう気温に比べ、都市の気温が高い状態」と言うこともできます。”
気象庁
都市部の気温が、都市でない地域に比べて高くなってしまう現象のことなのですね。この現象は、熱汚染現象とも呼ばれていて、世界有数の大都市である東京でももちろん起きています。
以下の関東地方の地図を見てみてください。都市部を中心に朝でもオレンジ色に、昼過ぎは真っ赤になっていますね。日本一暑い都市として、埼玉県の熊谷が挙げられますが、これもヒートアイランド現象が原因の一つです。さらに、北関東の山を越えて吹き込む暖かい風(フェーン現象)も熊谷において猛暑が続く原因となっています。
図 2013年8月11日05時(左図)、15時(右図)における関東地方の気温の分布図
ニューヨークやロンドン、パリ、ベルリンといった海外の大都市でも、ヒートアイランド現象は確認されています。外国の都市でも生じている現象なのです。今後、急成長及び急速な都市への一極集中が進むアジア各国(上海、バンコク、デリーなど)でもヒートアイランド現象が深刻化すると言われています。
また、ヒートアイランドは、英語で"Urban Heat Island"といい、その頭文字から"UHI"と略します。
※熱汚染現象とは
“石炭・石油の消費の増大や原子力発電などに伴って発生する熱エネルギーが、大気中や海水中に放出され、気温や海水温を上昇させる現象。”
eco検定公式テキスト
ヒートアイランド現象の原因は
では、どのような原因でヒートアイランド現象が起きてしまうのでしょうか。その原因には以下のようなものがあると考えられています。
人口排熱の増加(建物や工場、自動車などの排熱)
地表面被覆(ひふく)の人口化(緑地の減少とアスファルトやコンクリート面などの拡大)
都市形態の高密度化(密集した建物による風通しの阻害や天空率の低下)
eco検定公式テキスト
都市部には人口が密集し、大量の排熱が発生すると共に、緑が少なく、コンクリートジャングルになってしまっていることからヒートアイランド現象が生じてしまうのですね。
コンクリートやアスファルトは、暑い日に触ったことのある人ならわかると思いますが、熱が溜まって非常に高温になってしまっています。土壌や緑に比べて熱を貯めこみやすい性質があるのです。
また、土壌や緑には、貯めこんだ水を蒸発させることで熱を下げる性質がありますが、コンクリートやアスファルトはそもそも水をため込むことができません。土が見えず、植物も少ない都市部では、こうしたヒートアイランド現象の原因がたくさんあるのですね。
ヒートアイランド現象の影響
ヒートアイランド現象は、わたしたち人間の生活に影響を及ぼすだけでなく、そこに住む動植物にも大きな影響を与えます。
様々な影響の例 ( eco検定公式テキスト から)
人の健康
夏季に猛暑日や真夏日が増加し、熱中症の発症が増える
夏季の高温化や熱帯夜の増加によって睡眠が阻害される
夏季の高温化により、光化学オキシダントが高濃度となる頻度が増える
都心部で暖められた空気により起こる熱対流現象で、大気の拡散が阻害され、大気汚染濃度が高まる
人の生活
夏季の高温化により冷暖房負荷が増え、エネルギー消費が増加する。一方、冬季の高温化は暖房エネルギーを削減する。
地表面の高温化により都市に上昇気流が起き、積乱雲となって短時間に激しい雨が降る場合があり、都市型洪水が多発する。
植物
春の開花時期が変化したり、紅葉時期が遅れる可能性がある
※熱帯夜とは、夜間の最低気温が25度以上になる日を指します。
こうした様々な影響が確認されています。近年多発しているゲリラ豪雨(夕立)も、ヒートアイランド現象が原因の一つとなっているのですね。また、感染症を媒介する蚊が越冬できるようになってしまうとも言われています。
ヒートアイランド現象は冬にも起こる?
ヒートアイランド現象は主に夏のニュースで聞く単語ですよね。では、冬にもヒートアイランド現象は起きているのでしょうか。
正解は、もちろん起きています。人間は冬でも都市部で活動しています。冬の気温上昇は、好ましいものとして受け取られがちであるため、特にニュースにはならないのですね。
実は、都心部と郊外の気温差は夏よりも冬の方が大きいのです。冬のヒートアイランド現象には、上述の問題にも挙がっていましたが、感染症を持つ蚊が越冬できるようになってしまったり、花の開花時期がずれてしまったりといった影響があります。
ヒートアイランド現象の対策は?
では、ヒートアイランド現象はどのように対策したらよいのでしょうか。ヒートアイランド現象対策には、「緩和策」と「適応策」があります。
緩和策とは
ヒートアイランド現象の原因を削減する対策です。緩和策の例として、人口排熱量を提言するための建物の省エネルギー推進や、交通渋滞の緩和、地表面からの輻射熱を削減するための遮熱性舗装・保水性塗装の施工、緑化の推進、地下水涵養を確保するために透水性舗装や雨水浸透桝の普及などがあります。
国は、2004年、総合的なヒートアイランド対策の基本方針を定期し、ヒートアイランド対策大綱を策定しました。また、地域の実情に沿った取り組みも推進されています。例えば、東京都では、自然保護条例で一定規模以上の敷地を持つ新築・改築建築物の屋上緑化を義務付けていますが、この対策は他の自治体にも広がっています。
eco検定公式テキスト
適応策とは
ヒートアイランド現象がある程度生じることは避けられないとする前提に立ち、健康影響などを可能な限り軽減する適応策があります。日射を遮蔽するテントの設置や緑のカーテン、樹木による木陰の創出、空調機器の室外機から放出される排熱の削減、歩行者空間の風通しの確保、人工的なミスと(霧状の水)の噴霧、広場への噴水設置など、さまざまな方法でクールスポットを創出して熱ストレスを軽減する手法があります。
eco検定公式テキスト
おわりに
ヒートアイランド現象について、おわかりいただけたでしょうか。ヒートアイランド対策は2つありましたが、特に適応策は、私たち個人個人が取り組むことのできる対策となっています。クーラーの温度を1度下げる前に、緑のカーテンを作ってみるなどしてみてください。雰囲気からも涼しくなれますよ。
ヒートアイランド=地球温暖化ではありません。しかし、ヒートアイランドによる都市部の気温上昇が、地球全体の温暖化に寄与していることも事実です。気になる方は、こちらの記事も読んでみてください。
他記事:地球温暖化とは?【懐疑論も】