ポール・マッカートニー主導のミートフリーマンデーって?【週1の工夫が地球を救う!】SDGsにも

ミートフリーマンデーとは?

みなさんミートフリーマンデー(Meat Free Monday)という活動をご存じですか?元ビートルズのポール・マッカートニーとその娘ステラ・マッカートニーが地球環境保護などを目的としている活動です。

どういった活動かというと、その名の通り週に1度、月曜日だけでも肉を食べるのをやめましょうという活動です。

では、なぜ週に1度だけ肉を食べずに菜食を実施することが地球環境保護につながるのでしょうか。今回は、肉食とその環境負荷について学んでいきましょう。



世界の食料事情

World Population Growth, Our World in Data

ではまず、世界の食料事情を掴んでいきましょう。まず、上の図を見てみてください。何の図かわかりますか?

そう、これは世界の人口推移のグラフです。「環境問題とは?」の記事でも少し紹介しましたが、18世紀ごろから人口が爆発的に増加していることがわかります。

18世紀、イギリスから始まった産業革命を発端として爆発的に人口が増加しました。人口が増えるということは、その分食べ物が必要になりますよね

次に、下の図を見てみましょう。こちらは、2000年の人口と食料需要を、2050年のそれらと比較したものになります。この50年間だけでも、人口が1.6倍に増加し、その分食料需要も1.6倍になるのですね。

こうした爆発的な人口増加に十分な量の食料を供給するためには、農業の活性化が必要不可欠です。

農林水産省

過去には、緑の革命や白い革命といった、食料生産における画期的な改革もありました。今後、ITを駆使することでこうした革命が生じる可能性はありますが、緑の革命や白い革命がそうであったように、やはり急速に増加する食料需要を全て賄うことは難しいでしょう

緑の革命とは

“農作物の高収量化を目指した一連の品種改良。1960年代後半から各種農業研究所によるコムギ,米,トウモロコシの品種改良が相次いだ。特にフィリピンの国際米穀研究所 IRRIは,高収品種の短稈イネ IR8の開発に成功し,これによってアジア諸国の食糧不足は解消するとさえいわれた。しかし,丈が短いので在来種に比べ洪水や病虫害に弱く,収量は意外に伸びず,味の点でもなお改良の余地がある。緑の革命の結果,アジア各国の国内における貧富の差はかえって拡大したといわれる。“ 

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

白い革命とは

“1970年代、インド政府の”Operation Flood”と呼ばれるプロジェクトの一つで、牛乳の生産量を、販売経路などの効率化により牛乳生産量を大幅に増加させたプロジェクト。結果として、30年間でインドの牛乳生産量は2倍になり、酪農は田舎地域での最も大きな持続可能な雇用の創出源ともなった。”

https://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Flood



日本の食料事情                                

http://worldpopulationreview.com/

次に、日本の食料事情を考えていきましょう。上の世界の人口ランキングを見てみてください。2019年現在、日本の人口は現在世界11位です。もちろん、単純に考えると世界で11番目に多く食料が必要ということになります。

しかしながら、現在の日本は人口減少社会です。したがって、食料需要が今後増えるとは考えづらく、特に何も対策しなくていいんじゃないかって気がしますよね。

一方、農林水産省によると、2017年の日本の食料自給率(カロリーベース)は38 %です。6割以上の食料を海外からの輸入に依存しているということですね。

したがって、もし食料輸出国の人口が増加して国内需要が高まり、輸出に回す分の食料が減ってしまうと、日本人全員が十分に食べていけるだけの食料を輸入して得ることが難しくなってしまうかもしれません。

世界の人口増加に伴う食料需要の増加は、日本にとっても他人ごとではないのですね。

日本の食品廃棄

環境省によると、日本における2015年度の食品廃棄物は約2842トン、このうち、本来食べられるにも関わらず捨てられた食品ロスは約646万トンです。

これは、国際連合世界食糧計画(WFP)による世界の食料援助量の約2倍にも相当する量に値します。日本は、食料自給率が低く海外から大量に輸入しているのにもかかわらず、大量に廃棄してしまっているのです。

食の西洋化が進むと同時に、経済的に豊かになり、お金さえあれば食べ物に困らない生活が遅れるようになったためでしょうか。

日々の食事を振り返ってみてください。一日三食の食事を毎日繰り替えす中で、食べ物を何一つ残すことなく全て食べきっていますでしょうか。冷蔵庫の食品、一日でも賞味期限が切れると捨ててしまっていないでしょうか。多くの方たちは、食べることのできるはずであった食べ物を日常的に廃棄してしまっているのです。

また、農作物に完璧な見た目を求め、スーパーやコンビニに常に在庫があることを求める消費者の要求により、消費者の手に渡る前に廃棄されてしまう食べ物も数多いです。

世界の食料需要が増加し、全ての人に十分な食料が行きわたっているわけではないのにもかかわらず、大量の食品を廃棄してしまっている日本の現状、考え直さなくてはなりませんね。

まずは、ご飯を残さないようにすることからでも始めていきましょう。

食べ物と環境負荷

ここで、本題の食べ物と環境負荷について入っていきましょう。海に囲まれた島国であり、古くから農耕民族として知られる日本人は、あまり肉を食べてきませんでした。

しかしながら、戦後に食の西洋化が始まり、肉食の文化が広がりました。結果として、以下のグラフからわかるように急速に肉類の消費量が増加しました。また。このグラフから世界平均が増加しているだけでなく、中国の肉類消費量も大幅に増えていることがわかります。

農林水産省

お肉は美味しいですし、その何が悪いんだと思うかもしれません。しかし、以下の図を見てみてください。「畜産物1 kgの生産に必要な穀物量」を、日本における飼育方法を基にしたとうもろこし換算によって試算した図となります。

牛肉1 kgの生産に穀物が11 kg、豚肉の生産に7 kg、鶏肉の生産に3 kg、そして鶏卵の生産に3 kgの穀物が必要であることがわかります。

これは、何を意味するのでしょうか。

穀物のままであれば11 kgであった食料が、牛肉として生産されると1 kgになってしまうのです。簡単に言い換えると、穀物のままであれば11人分の食料であったのにもかかわらず、それを用いて牛を育て、牛肉として食べようとすると1人分の食料にしかならないのです。

もちろん、肉と穀物の持つ単位当たりのエネルギー量は異なりますから、単純な比較はできませんが、肉を生産するためには大量の穀物を家畜に与える必要があるのです。したがって、畜産物消費量が増加するとすると、穀物需要も急速に増加することになるのですね

農林水産省

家畜を育てるためには、広いスペースが必要です。急速な人口増加に対応するため、穀物を育てるために開発を進め、さらに家畜を育てるために開発を進めた結果、森林破壊砂漠化といった課題も生じています。

ただでさえ、人間の増加によりスペースが不足してきているのにもかかわらず、エネルギー効率の悪い家畜を育てるのは持続可能な選択ではありませんね。

また、家畜は温室効果ガスの一つであるメタンの発生源としても知られています。家畜の糞やげっぷ温暖化の大きな原因の一つとなっているのですね。

さらに、家畜を育てるためには大量の水も必要です。1 kgの牛肉を生産するためには、14000リットル近い水が必要であるとされています。食料生産が、気候変動の大きな要因の一つにもなっているのですね。

私たちにできることは?

では、私たちにできることとは何でしょうか。それが、ポールの活動「ミートフリーマンデー」に参加することです。肉を全く食べない、ビーガンやベジタリアンにいきなりなることは難しいと思います。

特に、日本においてはベジタリアンレストランやベジタリアンメニューは非常に少ないのが現状です。したがって、無理にベジタリアンやビーガンになる必要はありません。

週に1日、月曜日だけでも肉を食べない日を作るというのが、私たちが簡単にできる環境負荷を減らすことのできる活動です。

イギリスでは、今年5月上旬、英国土壌協会が教育省に対し、「週に一度は肉なしデーを作り、植物由来のタンパク質や食材のみを使用したメニューを提供することを、すべての公立学校に義務づける」よう提言しました。

スウェーデンの女子高生環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが主導する気候変動に対する学校ストライキ運動(School Strike for Climate Change)に参加している学生が増えていることも関係しているようです。

また。アメリカのカリフォルニア州では、すでに学校給食における植物由来製品の割合を増やすよう法整備が進んでいます。

欧米ではベジタリアンが多いことからもわかるように、個人の環境意識からしても、欧米は非常に進んでいます。日本でも、週に1日、月曜日だけで良いので、肉を食べない日を作り、少しずつでもよいので、社会をより持続可能なものにしていきたいですね。

内閣府や東京都庁もミートフリーマンデーに貢献!

2017年から内閣府、そして2018年から東京都庁もミートフリーマンデーに貢献しています。内閣府食堂や都庁食堂において、毎週月曜日にベジ定食が提供されています。

現・東京都知事の小池百合子氏は、環境大臣を務める等環境問題に強く関心を持っており、クールビズの導入などにも貢献しました。こうして国や地方自治体から積極的に環境問題に取り組むことで、市民へと取り組みが浸透しやすくなりそうですね。

植物ベースの肉を製造している会社も

ミートフリーマンデーを推進しているからと言って、肉の味が嫌いなわけではありません。でも、環境のためには肉を我慢しなくてはならない…。そんな葛藤に応えるように、アメリカを中心として「代替肉」と呼ばれる植物ベース(主に大豆)の肉の製造が始まっています。

有名なのが、アメリカの「ビヨンド・ミート」と「インポッシブル・ミート」です。マクドナルドやペプシコ、ケンタッキーフライドチキン(KFC)といった大手チェーンとの提携も決まり、これから伸び盛りの会社です。

まだ日本へ上陸していませんが、コロナが落ち着き海外に行く機会があったら、ぜひ探して食べてみてください。日本では、モスバーガーやフレッシュネスバーガーでもソイミート(大豆で作ったお肉)のハンバーガーを発売しています。

ビヨンド・ミート社を中心とする代替肉については、以下の記事に詳しく記してありますので、よかったら読んでみてください。



ちなみに…

ベジタリアンとビーガンの違いって知っていますか?

ベジタリアンとは、“菜食主義者。肉や魚などの動物性食品をとらず、野菜・芋類・豆類など植物性食品を中心にとる人。”

小学館デジタル大辞泉

“肉類に加え卵・乳製品なども一切食べないビーガン(ピュアベジタリアン)、植物性食品と卵を食べるオボベジタリアン、植物性食品と乳製品を食べるラクトベジタリアンなどのタイプに分かれる。”

小学館デジタル大辞泉

菜食主義者全般がベジタリアンであり、中でもビーガンとは、卵や乳製品といったものも食べない人たちのことなんですね。

ちなみに、ミートフリーマンデーを実践しているポールのような人は、お肉を食べるけれども、食べない日もあります。そうした人は、「フレキシタリアン」と呼ばれています。

ベジタリアンやビーガンの中には、動物愛護の思想が過激になってしまっている人もいます。暴力にまで訴える過激派は、思考が偏ってしまっていて、全く持続可能な世の中には貢献していません。他人に現状を訴えかけ、行動を促すのが適切であり、「持続可能な開発のための教育(ESD)」にもつながります。

思想を無理やり押し付けるのではなく、 多様性そして個人の考えを尊重することも大切にしていかなくてはなりませんね。

ベジタリアン・ヴィーガンメニュー

日本では、 ベジタリアン・ヴィーガンやレストランは増えつつありますが、やはり圧倒的に数が少ないです。欧米では、レストランにはほとんど必ず ベジタリアン・ヴィーガン メニューが1つはありますが、日本ではそうした ベジタリアン・ヴィーガンのためのメニューのあるレストランがまだまだ少ないのが現実です。

また、東京都心にはベジタリアン・ヴィーガン専門店が増えつつありますが、高級店に近い、値段の高いお店も多いです。お金に余裕がある方であれば良いのですが、そうでない方々にとっては毎食そうしたレストランに行くのは持続可能な選択肢ではありません。

また、一見ベジタリアン・ヴィーガン食材しか使っていないように見えてあさりやかつおといった動物性の出汁を使っている食べ物も日本食には多く、外食やコンビニ・スーパーの中食でのベジタリアン・ヴィーガンを貫きとおすのはなかなか難しいですよね。

なので、外食をする日には動物性の食べ物も食べるけれど、自宅で自炊する際には ベジタリアン・ヴィーガンになるというフレキシタリアンを目指すのが、現状の日本では一番過ごしやすい選択肢かなと思っています。 ベジタリアン・ヴィーガン向けのレシピ本もたくさん出版されており、非常においしく健康的に、そして環境に優しい生活ができます。ぜひ挑戦してみてください!

他記事:世界の環境首都!ドイツのフライブルク【環境政策とおすすめ観光スポット】
   環境の日って?【なんで6月5日なの?】

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参考

ミートフリーマンデーオールジャパン
https://www.meatfreemondayjapan.com/

AFP BB NEWS 気候変動対策に肉の消費減が不可欠、「欧米で9割減」提言 研究
https://www.afpbb.com/articles/-/3192970

COURRIER JAPON 学校給食でも気候変動対策を!週に1回の「肉なしデー」が子供の健康と地球を救う
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190602-00000001-courrier-eurp

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