プラスチックも追加!バーゼル条約とは?【ごみ問題】
バーゼル条約って?
バーゼル条約って聞いたことがありますか?
バーゼルは、スイス第三の工業都市。ライン川のほとりでスイス、フランス、ドイツの3か国国境にある珍しい都市です。この都市で締結された「バーゼル条約」。
環境問題、特にごみ問題を語るうえで非常に重要となってくる条約です。これを機にバーゼル条約とは何か、わかりやすく解説していきたいと思います。
バーゼル条約とは
“「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」といい、一定の廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組みおよび手続等を規定した条約である。国連環境計画(UNEP)が1989年3月、スイスのバーゼルにおいて採択、1992年5月5日発効。”
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要するに、自国で排出されたゴミを他国に持っていてはダメですよ、という条約です。では、なぜそのような取り決めが必要なのでしょうか。
バーゼル条約締結の背景
では、なぜゴミの国際取引を制限するこうした条約が必要となってくるのでしょうか。外務省によると、以下のような背景があるとされています。
(1)有害な廃棄物の国境を越える移動は1970年代から欧米諸国を中心にしばしば行われてきた。1980年代に入り,ヨーロッパの先進国からの廃棄物がアフリカの開発途上国に放置されて環境汚染が生じるなどの問題が発生し,何等の事前の連絡・協議なしに有害廃棄物の国境を越えた移動が行われ,最終的な責任の所在も不明確であるという問題が顕在化した。
(2)これを受けて,OECD及び国連環境計画(UNEP)で検討が行われた後,1989年3月,スイスのバーゼルにおいて,一定の有害廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組み及び手続等を規定した「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が作成された(1992年5月5日効力発生。2015年5月現在,締約国数は181か国,EU及びパレスチナ)。
(3)我が国は,リサイクル可能な廃棄物を資源として輸出入しており,条約の手続に従った貿易を行うことが地球規模の環境問題への積極的な国際貢献となるとの判断の下,1993年9月17日に同条約への加入書を寄託し,同条約は,同年12月16日に我が国について効力を生じた。
外務省 バーゼル条約
要するに、先進国がいらない廃棄物を途上国にもっていってしまうからですね。先進国は、自国で処分すると高額になってしまうため、途上国にゴミを持っていくのです。
しかしながら、途上国はゴミの処理システムがしっかりしていませんから、そのゴミをどこかに不法投棄してしまったりするわけです。したがって、先進国で出たゴミは、行方不明になってしまうわけです。
一方、当然ゴミが自然に消えてしまうなんてことはありません。山中や海などに放置され、自然の汚染の原因になってしまっているのです。
特に海に投棄された、あるいは河などに投棄され、結果的に海に流れ着いてしまったゴミが問題となっています。皆さんは、ウミガメの鼻にストローが詰まってしまった映像を見たことがあるでしょうか。
プラスチックゴミは、基本的に自然界では分解されません。こうしたゴミは様々なところに蓄積されていきます。海中では、プラスチックが浮遊し、海流の影響でゴミが大量に集まってしまっている場所すらあります。
海の生き物たちは、そのプラスチックを食べ物と間違えて食べてしまったりするわけです。結果として、胃の中で消化されずにたまり、死んでしまうイルカやクジラ、ウミドリ、ウミガメも少なくありません。
大量のプラスチックゴミ
“現在、推定1億トンのプラスチック廃棄物が海中で発見されており、廃プラスチック汚染が「まん延」する事態に至っている。UNEPによると、海に流れ着くプラスチック廃棄物は年間約800万トンに上る。”
AFP BB News
“世界のプラスチックの年間生産量は3億トン以上に上り、少なくとも5兆個のプラスチック片が海洋を漂っていると推計されている。”
AFP BB News
世界中で、プラスチックは大量生産されています。便利で安価なのでその汎用性は大きいですね。しかし、大量のプラスチックが山中や海、河に放棄されてしまっているのです。こうした事実から、2019年5月、バーゼル条約が修正され、規制対象にプラスチックが含まれるようになりました。
マイクロプラスチックとは?
ここで、もう一つのプラスチック問題、「マイクロプラスチック」についても紹介していきます。マイクロプラスチックその名の通り、非常に小さいプラスチックのことです。
現在、大量のマイクロプラスチックが海中を漂っていることが確認されています。これらは、微生物に摂取され、それを魚が食べ、食物連鎖でつながり、人間への体内にも入ってきます。
マイクロプラスチックは、残留性有機汚染物質(POPs)を吸収すると言われており、それが蓄積された魚を人間が食べることで、人間の健康影響も懸念されています。
“マイクロプラスチック(英: microplastics)は、(生物物理学的)環境中に存在する微小なプラスチック粒子であり、特に海洋環境において極めて大きな問題になっている。海洋生物がマイクロプラスチック自体と、それに付着した有害物質(PCBやDDTなど)を摂取し、生物濃縮によって海鳥や人間の健康にも影響することが懸念されている。科学的な検証・検討は途上であるが、日本を含めた世界の官民で、発生量抑制や回収を目指す取り組みが始まっている。”
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マイクロプラスチックはどこから発生するの?
では、マイクロプラスチックはどこから発生するのでしょうか。その発生源は大きく分けて3つあるとされています。
工業用研磨材、(角質除去タイプの)洗顔料、化粧品またはサンドブラスト用研削材[8]などに直接使用するために生産されるマイクロプラスチック、または多種多様な消費者製品を生産するための前段階の原料(ペレットまたはナードルと呼ばれる)として間接的に使用するために生産されるマイクロプラスチック("一次マイクロプラスチック")。マイクロビーズとも呼ばれる(en:Microbead)
特に海洋ゴミなどの大きなプラスチック材料が壊れて段々と細かい断片になる結果、環境中に形成されたマイクロプラスチック(いわゆる"二次マイクロプラスチック")。この崩壊をもたらす原因は、波などの機械的な力と太陽光、特に紫外線 (UVB) が引き起こす光化学的プロセスである。
家庭での衣類の洗濯による布からの合成繊維の脱落。下水道に流れ込む洗濯排水中のマイクロプラスチック粒子と環境中のマイクロプラスチックの組成との比較により、1 mm未満の粒径のマイクロプラスチック汚染の大半が脱落した合成繊維から構成される可能性があることが示唆されている。最近数十年間の世界のプラスチック消費量の増加により、マイクロプラスチックは全世界の海洋に広く分布するようになり、その量は着実に増大している。人口密集地から遠い北極海の海氷中でも確認されている。
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歯磨き粉や洗顔材に入っているツブツブだけでなく、家庭の衣類からも発生しているのですね。中でも今回重要なのが、2番目の項目です。海洋ゴミなどの大きなプラスチックは、徐々に小さくなり、マイクロプラスチックとして海中を浮遊することになるのです。
マイクロプラスチックになってしまうと、海中から回収するのは非常に難しくなります。私たちは、こうした事態を防ぐためにも、プラスチックを中心としたゴミが海中に投棄されるのを防がなくてはなりません。
今回、バーゼル条約の制限項目にプラスチックが加わったのも、こうした背景があったからでしょう。
つくる責任 つかう責任
国連の「持続可能な開発目標 (SDGs)」の12番目の目標は「つくる責任、つかう責任」です。私たちは、プラスチックを大量生産、大量消費しています。プラスチック関連の課題として挙げられることが多いのは、その廃棄方法です。
しかしながら、そのプラスチックは私たちが使用しているため、生産され、廃棄されるのです。生産者は、作って終わりではなく、どのようにその製品としての命を終わらせるのか責任を持って考えなくてはなりません。
また、使用者も、プラスチック製品がどのように生産され、どのように廃棄されるのか意識しなくてはなりません。それを意識することで、おのずとプラスチック製品を使う必要のない場面が多々あることに気がつくようになるでしょう。
最近、自らプラスチック規制を始めている企業もあります。スターバックスやマクドナルドはプラスチックストローの完全廃止を発表していますね。
スーパーやコンビニで不要なレジ袋を断ったり、プラスチックストローを使うのを控えたりするだけでも、プラスチック削減への一歩を踏み出せます。ビニール袋は、英語でプラスチックバッグ(plastic bag)です。プラスチックを日々大量に使用し、廃棄してしまっている生活を、一度見直してみませんか?
ちなみに…
マイクロプラスチックは英語で”Microplastics”、バーゼル条約は英語で”Basel Convention”です。正式名称は” Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and Their Disposal”です。英語の文献を読むときには、覚えておきましょう。
また、世界の環境首都と呼ばれるドイツのフライブルクは、バーゼルから電車で45分程度のところにあります。フライブルクに関する記事も書いてみたので、ぜひ読んでみてください。
世界の環境首都!ドイツのフライブルク【環境政策とおすすめ観光スポット】